この記事は以下のような人におすすめ
- 生涯に渡り、歯の健康を保ちたい
- 奥歯より前歯が大事だ
- 外車やブランド品に興味がある
人は見た目が100%!歯は奥歯が80%!!
今回のテーマは“見える外見”と“見えない中身”についてです。結婚相手を選ぶときは見た目で選びますか?それとも中身で選びますか?そんな会話をしたことがみなさん一度くらいはあるのではないでしょうか。たまに「両方!」という人がいますが、それは反則です(笑)全部いい人なんていませんからね。
ともあれ今回のテーマは歯を長持ちさせるために最も重要なテーマの一つです。人間はどうしても、見た目に左右されます。それは自然なことです。不細工より美しい方がいいに決まっていますし、人の目に入ってくるのは内面より外見が先です。「目」が仕事をするわけですから、「目」で見えるものを追ってしまいます。しかしながら見た目を重視しすぎるあまりに目で見えない部分を軽視しすぎると将来的に歯が崩壊してしまいます。その例をいくつか紹介していきましょう。
● 見える前歯を重視して、見えない奥歯をおろそかにして歯の崩壊を招くパターン
これは中年女性によく見かけます。こういう方はブランド物を身にまとっている確率も高く、高級車に乗っている確率が高いです。(あくまでも僕の経験上)これをやっちゃうと歯の崩壊につながる可能性が非常に高いです。
人間の歯は前歯と奥歯に分けることができます。前歯は物を捕まえる働きがあり、奥歯は物をすりつぶす役割があります。まずそもそもの役割が違います。そして大事なことはこの両者はどちらが歯に荷重がかかりそうでしょうか?言うまでもなく奥歯ですね。捕まえる作業とすりつぶすの作業、どう考えても後者の方が強い力がかかりそうです。
ここからが大事です。つまり人間の歯は奥歯の方が前歯より力がかかることが想定されて作られています。ということは奥歯がなくなれば前歯には想定外の力がかかります(噛む力は基本変わらない)。想定外の力がかかれば、歯(この場合は前歯)はダメになっていきます。人間の歯は失うことを前提に作られているわけではありません。つまり奥歯がなくなることなんて想定されていないので、奥歯がなくなれば、前歯に想定以上の力がかかり、失う原因となるわけです。
これはなかなか患者さんが気づかない盲点です。奥歯がなくなれば“咬みにくくなる”ことは推測できますが、“ダメになる”ことはなかなか想像できません。
奥歯がなくなると、前歯がどんどんダメになって総入れ歯になっていくということはよくあるパターンです。ですから奥歯を失わないことが歯の健康を目指すうえで重要な要素になります。
歯がなくなった場合に入れ歯やブリッジという方法で補うことが良くありますが、それでもなくなった歯が負担してた分を周りの歯が支えなくてはならない、これがまたほかの歯をダメにしていくわけです。インプラントは別です。自分で頑張れるので、他の歯に迷惑をかけません。インプラントは適応ケースさえ見分ければ、非常に良い治療です。
確かに前歯は大事ですが奥歯という縁の下の力持ちがあってこそなんですね。それを知らずに前歯にはお金をかけて、奥歯をないがしろにする人はいます。10年後、20年後の健康を考えるなら、奥歯を大切に。
●むし歯にならないからといって歯医者から遠ざかり、久しぶりに受診して重度の歯周病になっているパターン
これは中年男性に多いでしょうか。無症状=問題がないという認識により失敗を招くケースです。
小さいころはむし歯に苦労することがなかったために20年も30年も歯医者に行かずに、ある時歯の不調を訴えて来院し、調べてみると重度の歯周病と診断されるというケースです。重度の歯周病になってしまうと、メンテンスが非常に難しくなり、現状維持することも難しくなります。症状が進行して歯がダメになっていく可能性が高くなります。
若い頃というのは稀なケースを除けば歯周病になることはなく、むし歯にさえ気を付けておけばよいのですが、40歳近くになると歯周病の発症が出てくるので気を付けておかなければなりません。小さいころにむし歯で苦労していない人は、俺は歯が丈夫なんだと高を括る傾向にあり、口の健康には気を留めずに気づいたら歯周病にかかってしまうという訳です。さらにむし歯になりにくい人は歯周病になりやすいという事実があります。
問題が起こらなければ、大丈夫だろうと油断してしまうのも無理はありません。ただ油断大敵という言葉があるように、謙虚な姿勢で行動していくしかないのだと思います。このケースは、歯周病という病気が40歳くらいからなりやすくなり、初期の状態では痛みもでないということを“知っているかどうか”が鍵です。歯の知識が健康につながる良い例だと思います。
●銀歯より白いプラスチックを選んで失敗するパターン
奥歯に虫歯ができました。さあ治しましょう。保険の範囲なら銀歯と白いプラスチックで治す方法があります。どちらを選びますか?ここまでお話を聞いてくれているみなさんならもうお分かりです。安易に白いものを選ぶと必ず失敗します。
このケースも同様に、患者さんの知識が追いつかないために理解してもらうのが難しいケースです。深く思考しなければ、迷うことなく見た目が白いプラスチックの治療一択です。しかしながら治療というのは見た目だけではありません。見た目以外に何か大事な要素はありますか?それは治療したものが今後どうなっていくのかという未来思考の視点です。
どうしても患者さんはその瞬間に何が起きるかに目が行ってしまいます。治療が終わったらそこで思考が終わってしまう。違うんです。治療が終わっても「時間」という流れに乗って生きていくわけで、治療したところも永遠不変ではないのです。治療した歯はその日から新たなスタートラインに立つわけで、その歯の未来を考える必要があります。
奥歯の治療を銀歯ではなくプラスチックで行った場合のデメリットは二つあります。
それは「プラスチックが微細なひび割れを起こして、詰めた周辺がむし歯になりやすいこと」と「プラスチックは擦り減りやすくかみ合わせが変わってしまうこと」です。
プラスチックは接着剤みたいなものでつけるので、奥歯の噛む力により使っているとずれたり微細なひび割れを起こして(肉眼では分からない)、プラスチックの周辺からむし歯になりやすくなります。またプラスチックは口の中で形を整えてやるものですから奥歯の場合は治療の難易度も上がり、精度が低くなることも問題に拍車をかけます。
またプラスチックはすり減ります。擦り減ると、噛み合わせが変わっていまいます。1箇所の治療で重篤な噛み合わせの問題が起こることはありませんが、数箇所あればきちんと噛み合わせが維持できずに長い目で見れば前歯に影響を与えることもあります。
そしてここまで来て、よく分からないなあと思う人もいると思います。それが大変危険で、よく理解できないのであれば、なんとなく白いプラスチックを選択するかもしれません。また歯医者の方も説明が面倒になるし、若い女性ならとりあえず白い方が喜ぶだろうというあいまいな基準で歯医者の方もプラスチックを選択してしまう可能性はあるでしょう。
コメント