先生から説明を受けた後に「ではどうされますか?」と言われることがよくあるんだよな。どうされますか?って聞かれても、どうしたら良いかいまいち分からないよ、、、。
きちんと説明をした上で患者さんに最後は治療を選択してもらおうと思っているんだけど、逆に患者さんに選択させることが、混乱を招いちゃっているのかしら。
先生の意見はいつも正しい?
治療は専門家である先生主導でいくのが良いか、それとも治療を受ける当人の患者さん主導で進めたほうが良いのかを考えていきます。
え?そんなの当然専門家に任せるべきでは?そう思われたあなた、いい患者さんです(笑)治療をする側にとって言うことを素直に聞いてくれる患者さんのが圧倒的に楽ですから。ただ現実はそうではありません。情報化社会の波も相まって、患者さんは各々自分なりに知識を持って来院されます。知識を持つということは、自分の考えを持つということ。考えを持てば、その考えを発言するものです。そしてその考えを歯医者サイドはうまく消化し、折り合いをつけていかなければなりません。
昔はこのようなことはなかったでしょう。どこの世界も素人が専門家にケチをつけるなんてことはあり得ませんでした。専門知識というのは素人が簡単に入手できるものではなく、素人は本当にど素人だったと思います。歯の世界も一緒。患者さんは歯の情報なんて入手するのが困難でした。それが今はパソコンや携帯があればかなりの情報を入手できるようになりました。
インターネットが世界を変えた
これはまさにインターネット革命によるものですが、インターネット革命には功罪があります。まずは攻の部分です。
これはやはり歯医者の襟を正したということでしょう。かつては歯医者が何をやっても「まあ患者さんには分からないだろう」という雰囲気がありました。今でこそお口の中の小型カメラなどを撮って説明ができますが、昔は言葉で「むし歯がありましたから詰めときました」なんてことを言われたって、何をされたか想像できるわけがありません。現在では説明するためのツールはたくさんありますし、インターネットで調べれば何をされたか分かるようになってきました。
ということで今では歯医者の方も「まあ患者さんには分からないだろう」というスタンスでやっていくのは難しくなってきましたので、それなりにちゃんとやらなきゃなという気分になってきたわけです。そんなことを言うと「患者さんに分からなくてもちゃんとやれ
よ!!」という声が飛んできそうですが、まあ人間というのは、人に見られてちゃんとした行いをするものです。あなたは家の中と家の外でどちらの方がシャキッとしてますか?監視の目というのは人の襟を正すもので、それが人間らしさだと思っています。
ただし誤解がないように言っときますが、すべての歯医者が、患者さんが分からないからと言って適当にやっていたわけではありません。あくまでも”そのような傾向にあったでしょう”ということ。まあこれはどこの世界も一緒。いろんな人がいますから。それでも僕は歯医者は人間的にはどうなの?という人が多かったのでは?と思っています。まあ僕も人のことを言えた義理ではないような気がしますが(笑)
そしてインターネット革命の罪の部分。それは中途半端な知識が勘違いを生んでしまうということです。
先生は患者さんの何倍も考えている
患者さんの方も知識を身に着け始めた昨今、先生と患者さんはどのように向き合っていけばよいのか。ここで僕が一番言いたいのは、申し訳ないですが患者さんは先生と比べたらどこまで行っても素人だということです。ここを勘違いしている患者さんが少なくともいると思います。治療を選択する際に患者さんは1つの要素で判断をしますが、先生は少なくとも10くらいの要素を考えて判断しているわけです。
たとえば患者Aさんが歯の違和感を訴えて来院されたとします。僕は抜歯が必要であると判断をしました。Aさんは抜きたくないと訴えました。Aさんの判断基準は痛いか痛くないか。
僕は違います。その歯を残すことによるデメリットを考えます。病気の広がりにより隣の歯も悪くなるのではないか、汚れが溜まりやすくなり、他の歯がむし歯や歯周病になるリスクが上がるのではないか、汚れが増えると細菌も増え血管に乗って他の臓器の感染を招くのではないか、さらなる歯の崩壊を招いて、歯を抜くのが難しくなるのではないか、歯の崩壊によりかみ合わせが変わって来るのではないか、などなど。まあそれなりに考えているわけです。
先生に任せるところと患者自信で決めるところの線引きが大事!
人間は経験したことがないことや知らない世界のことを受け入れるというのは苦手です。しかしながら、その辺りも受け入れてもらえないと僕らが提案する治療も受け入れられないこともあるでしょうし、実際に数年後に痛い目に合うこともあるでしょう。“後から分かってくることもあるのかな”という気持ちで歯医者と接するといいのかなと思います。
患者さんと歯医者の一番の違いはお口の中に関してどこまで先を読めるのかということ。初心者棋士とプロ棋士の違いみたいなもの。はたして何手先まで読めるのか。患者さんは先が読めないから、目先の利益に目が行ってしまいます。この気持ちは子供がいらっしゃる方ならわかると思いますが、子供を説得するときのあの気持ちに似てますね。「お前も大人になったら分かるよ」一度くらいは言ったことはないですか?歯の場合は悪くなってからでは遅いので気を付けましょう。
ということで今日のテーマのまとめに入りますと、基本的には先生主導がいいのではないでしょうか。自分で知識を身に着けて、疑問に思ったことを積極的に聞いていくというのはありだと思いますが、患者さん自らが率先して治療を選択するというのは失敗を招きそうです。人生は10年、20年単位ですから、歯の治療もそのくらいのスパンを見据えながら治療の選択をしてもらいたいなと思います。
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