医療法人って良く聞くけど、何か普通の歯科医院と違うのかな、、、。
歯科診療所には大きく分けて医療法人と個人事業の2種類があります。普通の業種で例えると会社を立ち上げているのか、個人事業主としてやっているかの違いと一緒になります。
医療法人とは?
歯科診療所の中で、医療法人として診療所と個人としての診療所の数の割合はおおよそ1:1です。ざっくりとした数字になりますが、日本には10万くらいの歯科診療所が存在し、半分が医療法人で半分が個人事業となります。
医療法人と個人事業の違いは何かはここでは深掘りしませんが、今回は医療法人化された歯科診療所について考察してみます。
医療法人は同じ系列の診療所を複数個出すことができる。
医療法人は民間企業で言うところの会社みたいなイメージです。会社だと支店を作ることがありますが、医療法人も同様に支店(病院の場合は分院と言います)を作ることができます。
有名な飲食店をイメージしてもらえれば、分かりやすいと思います。本店以外に支店がたくさんある飲食店は多くあります。医療法人も同様に本院以外に分院を持つことができます。
本題に入りますが、医療法人が複数個の診療所を開設して行った場合の経営者、従業員、患者さんのメリットとデメリットを考えていきます。特に僕は患者さん側にデメリットが大きいと声を大にして言いたいです。
規模が大きくなればなるほど良いサービスが提供されると思われている人も多いかもしれませんが、やはり医療というのは、一般企業とは提供するサービスの種類が違います。痒いところに手が届くサービスが理想ですが、痒いところ「近辺」に届くサービスになる可能性があります。
メリットとデメリットを考える上で比較材料になるのは、個人の診療所もしくは分院を持たない医療法人です。
異なる立場から見たメリット、デメリット
経営者のメリット、デメリット
経営者のメリットは経済的なことに尽きるでしょう。これは飲食店がなぜ多店舗展開をするのかと言うのと同じ理屈です。お金儲けを全否定しませんが、事実としてお金を儲けるためです。
一つの診療所やお店が挙げれる利益というのは限界があります。インターネット事業などと違い、診療所は人的資源を使って医業を営むわけですから、売上や利益という観点で見ると一つの診療所が生み出す売上は大小はあるのものの、掛け算にはなりません。
一方、分院展開(分院を増やしていく)ということをした場合はどうでしょうか。各分院がきちんと売売上や利益を確保できるならば、単純に掛け算方式で売上や利益を伸ばすことができます。
デメリットは責任が増えることと、経営がうまくいかなくなった時に被害額が大きくなることです。
前者に関しては、会社と同じです。組織が大きくなればなるほど、従業員のトラブル、治療上のトラブルなどが多くなり、それに対処していかなければなりません。また最終的な責任も負うことになります。
後者に関しても同様に、組織が大きくなればなるほど、経営が立ち行かなくなった時に被害は金銭的にも精神的にも大きくなります。
従業員のメリット、デメリット
従業員に関しては、一般企業をイメージしてもらえると分かりやすいと思います。会社が大きくなればなるほど福利厚生が手厚くなります。厚生年金の加入や有給取得がしやすくなるなどのメリットが考えれれます。
デメリットは二つあります。現場の声が届きにくくなることと、他の分院との不平等感を感じやすくなることです。
個人の診療所であれば、院長がいつも職場にいますので、現場の問題についてトップに直接相談することができます。しかしながら分院であれば経営のトップが現場にいないことが多いので、直接相談することが難しくなります。現場のトップに相談した後してもあまり解決しないことが多く、結局諦めて理舞うことも多いのが実情です。
また他の診療所と比較した場合に不満が出やすくなります。待遇面の問題や、同じ待遇でも明らかに労働環境が違ってくると不平等感を覚え、不満が溜まります。
患者さんのメリット、デメリット
患者さん側のメリットは、お金がかかった設備や環境のもとサービスを受けることができます。
分院展開している病院であれば、多額の資金を投入していますから、設備や機器に投資をすることができます。そのため、建物、設備、医療機器は最新であることが多いです。
次に患者さん側のデメリットについて述べますが、僕はここに問題点を感じています。
デメリットは先生が変わる可能性があるので、最適な治療を受けられない可能性があるということです。
一般の診療所でも複数の先生が出入りしている病院はあると思いますが、歯科治療において先生が変わることほど患者さんにマイナス要素をもたらすものはありません。大切なことなので、その理由を少し考えていきます。
先生が変わることは患者さんにとって百害あって一理なし
責任が分散される
患者さんが適切な治療が受けれない一番大きな原因がこれです。
人間誰しも責任は取りたくないものです。自分がした治療でさえ責任を回避しようとする人がいますが、他人が行った治療であれば以ての他です。前の人が行った治療の続きで、うまくいかなかったりすると当然前医が悪かったと思うのが普通の人間の思考回路です。
そしてその時に担当医はどのように対処していくかというと、患者さんに優しい嘘をつくということを始めます。担当医としても前医の悪口を言うわけにもいかず、なんとかその場を取り繕うほかないと言うのが実際のところでしょう。
いろんな人が治療に介入すれば責任は分散され、そのマイナス分は必ず患者さんに跳ね返っていきます。ただしそのマイナス分に気づくことは難しいので、いろんな先生が治療を介入しているケースも多くあるのでしょう。
カルテ情報は、治療の参考にならない
過去の患者さんの治療をきちんとカルテに書いておけば大丈夫ではないかと言う意見も出てきそうですが、そんな簡単な話ではありません。
先生によって治療方法が違えば考え方も異なりまし、治療の順番も違うこともあるでしょう。自分の慣れている順番でなされていない治療を途中から任されれば、慣れていないことをしなければいけません。慣れないことをやれば、出来は悪くなるでしょうし、失敗につながることも出てきます。
まとめ
医療法人が分院を展開する目的は、経営者が財を成すことが主目的になります。欲を満たすために努力をすることは必要かもしれませんが、それは患者さんのためではありません。
一般企業の会社であれば社会に価値やサービスを提供し、経済を回していくという使命がありますが、医療の分野であれば、サービスをきちんと提供できなかった場合のリスクヘッジがきちんとできない可能性があります。
先生が変わることは、患者さんにデメリットしかありません。治療というのは結果に至るまで目に見えないので患者さんには全く分かりませんが、上記の理由により、患者さんが受ける治療が適切なものではなくなるケースがたくさんありますのでお気をつけください。
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