この記事は以下のような人におすすめ
- 歯科界の将来が不安な歯学部現役学生
- 歯学部入学を検討されている人
- 歯科の歴史に興味がある患者さん
患者さんのニーズがどのように変化し、それに応じて保険制度がどのように変化してきたか
10年後を予測するのであれば、過去50年を振り返る必要がある。
歯科医師法が施行されたのは1906年と100年以上前のことだが、国民皆保険制度ができたのは1961年と戦後復興が少しずつ進んできた頃である。時代背景を考えると戦後の貧しさから抜け出す兆しが見えてきて、庶民のもとにもそれなりの食糧が手に届くようになった頃であろうか。
まず最初に、一番重要なことを申し上げます。保険治療の項目は需要が高まった内容がカバーされるということ。つまり虫歯が増えれば、様々な虫歯の治療が保険治療の項目に仲間入りし、予防の機運が高まれば予防に関連する保険の項目が充実します。それを念頭に歴史を紐解いていきましょう。
虫歯罹患率の推移
1970年代は統計を取っていなかったためデータはないが、1980年以降右肩下がりに虫歯の数は減ってきている。実は1960年代から70年代にかけては虫歯が急増したことが予想される。理由は経済成長共に虫歯の原因となるお菓子が一般庶民のところに届くようになったからです。戦時中は砂糖不足のため、一般家庭でお菓子を口にすることはありませんでした。
故に1961年が保険制度が制定されてから当面は、歯の治療=虫歯の治療だったと言えます。そしてご承知の通り虫歯の治療をすると神経がなくなった歯は数年後治療を繰り返したりしていずれ抜くことになります。抜いたところにはブリッジや義歯の治療がなされ、当然保険制度もブリッジや義歯をカバーするような内容になったということです。
21世紀に入ると、虫歯の数はかなり減ってきました。こうなると何が起こるかというと、ようやく「予防」に目が向けられます。多くの歯科医師は歯の健康を目指すのであれば予防が大切なことくらい虫歯がうじゃうじゃ湧いていた50年前から分かっていたとは思いますが、大学教育も保存や補綴が中心でしたし、何よりも患者さんのニーズが少なかったためにようやく最近になって予防の重要性が認識され始めました。
予防の重要性が市民権を得れば、当然保険治療の項目は予防に関連するものが多くなってきます。健康保険は病気が認定された後に初めて使用を認められる訳ですが、歯の予防に関してば厳密には病気でない状態であるにもかかわらず、保険内で当たり前のように予防=クリーニングが行われている状況です。国もこの状況を受け入れざるを得ないのでしょう。
今後の歯科界はどうなっていくのか
このように国民の需要が虫歯の治療から予防にシフトし、保険制度もそれにつられる形で制度設計されたというのが歯科界の歴史的背景です。
今後の未来を考えると、この流れは間違いなくどんどん進むと思う。歯の病気は虫歯と歯周病に大別されるが、虫歯はなくなりはしないが、“糖質のコントロール、セルフブラッシングの向上、メンテナンスの普及”により間違いなく少なくなる。
将来的に歯科医師の仕事は相対的に少なくなり、歯科衛生士が適切なメンテナンスを行えるように従業員を管理するということが主たる仕事になっていくのではないか、そう考える。歯科医師の絶対的な仕事量は今後少なくなっていうことが予測される。
一方矯正治療においては少し特殊な治療になるが、ますます需要が伸びていく分野であることは間違いない。健康が確約された後は「美」に関心を持ち始める、それが人間の性である。矯正と予防がこれからの歯科界のトレンドになるであろう。
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