勤務医必見 開設者と管理者、理事長と院長の違いとは?

病院経営

この記事は以下の問題を解決します。

  • 開設者と管理者の違いがわからない
  • 院長と理事長の違いが分からない
  • 分院長とはどのような立場なのかが分からない

開設者、管理者、理事長、院長、それぞれ言葉は聞いたことがあると思いますが、なかなか理解するのが難しいと思います。弁護士の方でもきちんと理解できていないこれらの用語について、公的にまたは法的にどのような意味をもつのか、考えていきましょう。

開設者・管理者について

管理者、開設者とは何?

開設者、管理者というのが一つのセットの言葉になります。先に申し上げておきますが、開設者、管理者というのは医者(歯医者)でなくてはなりません。

診療所というのは「誰がオープンしたのか」と「オープンした診療所を誰が管理しているのか」というのを社会的に明確しておく必要があります。国家を運営する上で、病院というのは社会的な信頼というのは必要不可欠であり、誰が出して、誰が管理しているのかということを広く周知させる必要があるということです。

診療所をオープンした責任者=開設者、診療所の運営管理の責任者=管理者

通常の開業医をイメージしてみてください。一人のドクターが自分で診療所をオープンし自分で切り盛りしているケースです。この場合、話は非常に簡単になります。自分で診療所をオープンし、自分で診療所の運営管理をしていきますので、開設者と管理者は同一人物になります。

問題なのは開設者と管理者が違ってくるケースです。

開設者と管理者が違ってくるのは開設者が複数の病院を開設した時です。俗に言う分院展開をしている医療法人の場合にのみ起こりうる事象です。ここで重要なのは病院の管理は原則的に一人で複数箇所を同時にすることは法律で認められていないということです。つまり開設者が2ヶ所以上の病院をオープンさせると必ずもう一人病院を運営管理する人=管理者が必要になるということです。仮にある医療法人の診療所が3つあるとすれば、3人のドクターが必要だということです。

開設者・管理者の具体的な責任と義務

診療所の開設者、管理者はどのような責任を負うのでしょうか。

先に管理者の義務をチェックした方が全体像が見えやすいので、管理者の義務を確認しましょう。

管理者の義務


 管理者は,当該医療機関における安全を確保するとともに,当該医療機関を医療法に適合するように適正に管理しなければなりません。
 ⑴ 安全管理体制確保義務
 管理者は,医療の安全を確保するための指針の策定,従業者に対する研修の実施その他当該医療機関における医療の安全を確保するための措置を講じなければならない(医療6条の10)。
 ⑵ 従業者監督義務
 管理者は,勤務する医師その他の従業者を監督し,その業務遂行に欠けるところがないよう必要な注意をしなければなりません(医療15条)。
 ⑶ その他の義務
 医療機関が提供する医療サービスにかかる一定の情報について,都道府県知事に報告するとともに,それらを記載した書面を当該医療機関において閲覧に供するかホームページ等に掲載しなければならない(医療6条の3第1項・3項)。

以下は主に医科に関係する内容ですので参考まで。

  •  患者を入院させたときは,担当医師に治療計画記載書面を作成させ,患者又はその家族に交付し適切な説明がなされるようにしなければならない(医療6条の4)。
  •  有床診療所の管理者は,入院患者の病状が急変した場合に適切な治療を提供できるように,当該診療所の医師が速やかに診療を行うことができる体制を確保するよう努めるとともに,他の病院又は診療所との緊密な連携を確保しておかなければなりません(医療13条)。
  •  検体や血液等の検査,医療機器や衣類等の滅菌消毒,給食等一定の業務を委託するときは,業務を適正に行う能力のある者として法令の基準に適合する者に委託しなければなりません(医療15条の2,医療規9条の8ないし15)。
  •  法令を守るために必要なときは,当該病院又は診療所の開設者に対し,施設の構造又は設備の改善を要求しなければならないと定められています(医療17条,医療規15条1項)。

開設者の義務

開設者は,開設者が当該医療機関に対する最終的な責任を負うことになります。開設者は管理者に管理を代行させているだけですので,開設者がトップというイメージです。

※ ちょっと細かい話をしますが、必要がない人は飛ばしてください。

上記のとおり,管理者から施設の構造又は設備の改善を求められた場合には,開設者は必要な措置をとらなければなりません(医療規15条2項)。
 また,都道府県知事は,人員の配置が厚生労働省令などに定める基準に照らして不十分な場合や施設の衛生状態等に問題があるときに,増員や施設の使用制限を命じることができますが,その名宛人は開設者となっていますし(医療23条の2・24条),管理者が不適切と認めるときは開設者に対し管理者の変更を命ずることができます(医療28条)。なお,開設者が,施設使用制限命令又は管理者変更命令に従わないときは当該病院又は診療所の開設許可が取り消されることがあります(医療29条1項3号)。

医療法人の理事長、理事

理事長、理事とは?

次に理事長、院長についてです。開設者、管理者は保健所に向けた言葉の定義ですが、理事長、理事という言葉は会社=法人に対する言葉として定義されています。

医療法人を立ち上げたときに代表に当たるのが理事長になります。立ち上げたと言うことは当然理事長が各診療所の開設者になります。株式会社の代表は代表取締役ですが、理事長は代表取締役と同じ位置付けになります。

理事長の他に理事というポジションがあります。理事長は株式会社で言うところの代表取締役、理事は株式会社で言うところの専務や常務と同じ扱いと考えて貰えば良いと思います。

管理者になるには医療法人の理事にならなければならない

診療所の管理者になるためには医療法人の理事にならなければなりません。また管理者を辞める時には理事を退任しなければなりません。

分院長を任される時にはここはきっちり理解しておく必要があります。分院長と言う言葉自体は法律上の用語ではないですが、概ね分院長=管理者と考えていいと思います。

病院の開設者からなんとなく「分院長やってくれない」と言う話を二つ返事で受けてしまうと後々トラブルに発展するケースが出てくると思います。分院長を引き受ける際は契約内容をよく確認するようにしましょう。

院長と開設者,管理者の関係

分院長言葉と同様に、実務的にはしばしば「院長」という言葉が使われますが,「院長」は法律上
の用語ではなく,誰を「院長」とするかは,法律上定まっていません。もっとも,「院長」は,社会通念上,医療法上の管理者のことを指すと考えられています。

上述したとおり,管理者は医師でなければなりません(医療10条・12条)。したがって,医師でない者が「院長」を名乗ることは,医師でない者が医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならないとする医師法の定めに違反する可能性があります(医師18条)。






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