何が正しいかは分からない。矯正治療の実態とは?

矯正・インプラント

今日は矯正治療についてです。興味がある方も多いのではないでしょうか。

●矯正治療は特殊な治療。歯医者みんながやっている訳ではない。

矯正治療は僕にとって大変因縁深いものです。実は僕も若いころに矯正をしておりました。若いと言っても中学生の頃です。そして実は大人になってからも矯正しました。なんで大人になってまた矯正なんてしたんですか?答えは簡単です。きちんと治っていなかったからです。

まさか自分が歯の専門家になるなんて中学生の頃にはみじんも思っていませんでしたね。歯科医になって、いろいろ勉強していくうちに中学生の時にした矯正治療がいかにちゃらんぽらんだったかが分かりました(笑)ほんと、いい迷惑ですよ。二度手間もいいところです。

まず、矯正治療というのはかなり特殊な治療です。理由は二つあります。一つは保険治療のラインナップにない(手術併用矯正は別)ということです。通常歯医者は保険治療をベースにいろいろ学んでいきます。いわゆるむし歯を治すということが基本的なことになっていきます。矯正治療というのは保険治療にラインナップにないわけで、ケースとしては非常に少ないですから、そもそもやる機会が少ないのです。歯医者の中でもやる人が少ないのが特徴です。

もう一つは治療期間が長いということ。歯の治療で2年も3年も続くということはまずないですが、矯正治療ではそのくらいの期間がスタンダードです。治療期間が長ければやったことというのは、後戻りができなくなることが多いし、結果が出なければ時間対効果、ないしは費用対効果という観点から患者さんの被る損害が莫大になる可能性があります。ですから治療期間が長いということは一つポイントになります。

ということで、みなさんにまず知っていただきたいのは矯正治療は特殊な治療ですべての歯医者がやっているわけではないという言ことです。

●矯正専門医と一般歯科の矯正医は仲が悪い!?

人が集まればいさかいが生じます。ほんと人間というのはダメな生き物です。先日ある勉強会に参加して返ってきた先生と新幹線ホームでばったり会ったのですが、こう言ってきました。「中山先生、どこでも人が集まれば問題が起きますよ。うちの歯科医師会でもそうですが、僕の勉強会グループでも人間関係でもめてます」と。

矯正専門医というのは基本的に矯正しかしない先生です。むし歯の治療はしません。ですから自分たちで学会のグループを作ってある程度の症例や技術があればそういう歯科医を専門医として認定していくわけです。一方、歯科医師免許があればだれでも矯正治療ができます。ですから一般の歯医者でも矯正をしている先生がいます。そしてそういう一般歯科の矯正医と矯正専門医は非常に仲が悪い。

特に矯正専門医からの恨み妬みが多いような気がしますね。矯正に関して言えば一般的に矯正専門医の方が一般歯科で矯正をされている先生より症例数は多いでしょうし、知識や技術も高いでしょう。ですから矯正専門医からすると一般歯科の先生がしている矯正治療を見ると、なんかレベルの低いことをやっているやつらがいるな、となるわけです。(当たり前ですが一般歯科医でもレベルが高い人もいれば専門医でもレベルが低いことはありますが、一般論でお話をしています)

患者さんは矯正専門医かどうかまでこまかくチェックしている人は少ないと思います。そもそも矯正専門医は歯医者の中で100人に1人くらいとかそれくらい少ない割合ですから、お住まいの地域によっては探すのも一苦労かもしれません。対して一般歯科医で矯正をする割合は5人に1人くらいだと言われています。だから患者さんの方もそのことはよくわからずに、矯正治療を受ける病院を探しているというのが現状だと思います。

●一般歯科医の矯正のレベルはどうなのか?

一般歯科医の矯正のレベルを考える前に矯正治療がどのくらい難しい治療なのかを考えなければなりません。ただこれはひとつ大事なことがありゴールをどのくらいに設定するかでその難しさは変わってきます。例えば野球をしている高校生がいたとします。目標をどう設定するのか。県大会での1勝なのか、甲子園なのか、プロを目指すのか。当然難易度は違ってきますよね。

矯正治療においては前歯がだいたい並べばいいのか、きちんとしたかみ合わせを構築するとこまでやるのか、口元や顔全体との調和まで含めてやるのか。これも同様に難易度は違ってきます。

目標設定のレベルを落とせばそれなりの知識と技術でできますが、高い目標であれば高いレベルでの知識と技術が求められます。一般歯科医の場合は矯正専門医に比べてどうしても知識と技術の見劣りがありますから、目標到達点が低いままで最後のフィニッシュまで来ることが多いのです。

しかしながら一番の問題は患者さんがそれになかなか気づかないということです。みんな前歯ばっかりに着目し奥歯のかみ合わせなど見向きもしません。並べることよりバランスよく咬ますのが難しいのです。実際には食事の時の咬む回数が無駄に増えたり、治療終了後の歯並びの安定に関わってくるところなのに。そのような事情があるので、一般歯科医でも矯正がまかり通ってしまうんです。

●矯正治療は突き詰めるとかなり難しい治療である

矯正治療だけでなく歯科治療全般に言えることですが、突き詰めると本当に難しい治療ばかりです。ですから先生によって患者さんの歯の人生は変わることもしばしばあるでしょう。特に矯正治療は期間が長いですからいったん始めるとなかなか途中で辞めれないですし、僕みたいにもう一度となると本当に無駄な時間を過ごしたとしか言いようがありません。

インプラントと同じで矯正治療も、自分がどのくらいの実力でどのくらいの難易度であれば手を出しても大丈夫な症例なの、ここをを判断することが歯科医に求められることだと思います。インプラントの項でお話をしたように、身の丈に合わないことをやる人がどうしても出てくるんですよね。

僕はかつて一般の歯科医で子供の矯正をしている人がいたので「どんな感じでやっているの?」と聞いたら「いや、先生適当ですよ」と返ってきたことがあります。適当はないだろうと思いましたが、まあ世の中というのは完璧な人ばかりじゃないからなと諦めました。患者さんには申し訳ないですが。

今回も若干暗い話になってしまいましたね。まあ僕の話はあまり明るい話題がなくて申し訳ないのですが、できるだけ嘘偽りのないように、事実に即して書いているつもりです。また今後もこのテイストで書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。

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