今回のテーマは「健診」です。健診と聞くと「検診」とよく混同してしまいますので少し整理をしておきましょう。まず健診というのは健康診断ですから、全身のチェックという意味合いが強いです。対して検診は検査をして調べるということですから特定の病気を調べる意味合いが強いです。歯科に関して言うと学校などで行われるものは「健診」、歯周病などの特定の病気に対するものは「検診」を使います。ただこの使い分けには本質的な意味はないと思っていますので、参考程度でよいかと思います。
そしていよいよ本題です。学校健診は日本全国で行われていますので、受けたことがないという人はいないかと思いますが、どのようなイメージをお持ちですか?イメージがわかない人のために質問を変えてみましょう。一人当たりに健診で費やす時間はどれくらいだと思いますか?…1分?2分?それとも30秒?
正確な数値は分からないですが、少なくとも1分かけていたら、時間がかかってしょうがないでしょうね。少子化になったと言えども学校に行けば数百人の児童生徒がいるわけです。1日に数百人を健診する日もあるでしょう。例えば200人の子たちを健診するとします。一人1分かかれば休みなしで診ても3時間20分。実際は休みなしで3時間20分やったら気分が悪くなるかもしれません(笑)のでしないでしょうが。
というわけで費やす時間は1分以下になることが多いと思います。そして健診する場所には診療台がありませんから、寝てもらうのも難しい、ライトも簡易的なものになってしまいます、唾液もエア(風)で飛ばせない。起きている状態では上の歯は非常に見にくいでしょうし、ライトはきちんと当たらないと当然見えにくい、そして歯に唾液がついていると表面がよく見えないのでむし歯を見つけにくい。
何が言いたいかと言いますと健診では細かな問題点をチェックするのは難しいということです。お母さん方の中には、学校健診で引っかかってこないから、うちの子は歯が大丈夫だと思っている方はいませんか?少なくともでかいむし歯があるということはないと思いますが、初期むし歯などがチェックできていない部分もありますのでお気を付けください。
またその逆の場合もあります。むし歯のチェックが入っているのに歯医者に行ったら何もないと言われるパターン。これもある程度は仕方ないところがあります。健診している側とすれば、短時間で多くの人の健診をするのでちょっとでも怪しい場合はチェックを着けさせてもらって、後は歯医者でじっくり見てもらってくださいよという気持ちなんです。
またその他にかかりつけの歯医者で経過観察している歯が健診で引っかかって来るパターン。健診結果を持ってかかりつけの歯医者に行っても経過を見ている歯なんで…と諭されて終わりです。せっかく足を運んでも今日は処置なしで終わりというのもなんとも言えない気分になりますね。
結局、健診(主に学校健診)というのは、予防目的にやっているわけではないんです。ではなぜやるのか?それは統計目的なんですね。どれくらいの人がむし歯になっているかを調べて、厚生労働省などがそのデータを利用して国の方針を決めていくわけです。予防として全く意味がないかと言えばそうではありませんが、健診というのは大雑把に診ているだけで、細かいチェックまでは出来ていないということを理解しておく必要があると思います。
ちゃんと予防していくためには、自分で定期的に歯医者に通い、食生活(特に甘いもの)に気を付けるしかありません。小さな努力を積み重ねれば必ず歯の健康につながります。
健診で安心しているお母さま方。健診の意義をしっかり理解して頂いて、ぜひ長きにわたる歯の健康を達成してもらいたいと思います。
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